こんにちは。ECの市場規模は年々拡大し、様々なECサイトやそれを取り巻く多様なサービスが誕生しています。このように通信販売の需要が高まる一方で、物流業界では、人手不足や激務化などの多くの課題が発生しています。
今回は、物流業界の現状や課題、国土交通省による施策、業界全体の今後の動向などを踏まえ、ECサイト運営ご担当者向けに、EC運営側として取り組むべきことについてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください!
国内ECの市場規模とは?
近年勢いを増すEC事業では、消費者が直接商品を手にとって購入するのではなく、インターネット上で購入手続きをした後、商品が消費者の手元に「お届け」されることから、物流業界全体に与える影響が大きいことは明らかです。そのため、まずは、国内ECの市場規模、成長率についてご紹介します。
経済産業省が実施した「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によれば、BtoC、BtoBの両者におけるECの市場規模が拡大していることがわかります。
具体的に、BtoCにおけるECでは、平成30年の市場規模は約18.0兆円にのぼり、前年の16.5兆円から約9%拡大しています。その中でも、物販系のECは、約9.3兆円で、全体の半分を占めています。また、同年のBtoBの市場規模は、344.2兆円で、前年の318.2兆円から約8.1%拡大しています。両者とも毎年10%前後で着実に拡大し続け、今後も市場規模の拡大が見込まれています。
参照:)電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI
物流業界の現状とは?
EC市場の拡大や、スマートフォンを用いたネットショッピングの需要増加に伴い、宅配便の取り扱い個数も増加しています。国土交通省の「平成30年度 宅配便取扱実績」によると、平成30年度の宅配便取扱個数は、43.7億個で、前年度から約1.3%増加しています。さらに特筆すべき点として、取扱個数全体のうち、全体の約97.4%(42.6億個)をトラック輸送が占めていることが挙げられます。
需要が高まる一方で、個人向けの小口発送の増加や、トラックドライバーをはじめとした、物流業界における人手不足の深刻化などにより、近年では、配送料値上げに関するニュースが増えています。実際に2017年以降、大手宅配企業が運賃の値上げを相次いで発表しています。
物流業界の需要が高まる一方で、課題の顕在化が顕著にあらわれています。
物流業界が抱える課題一覧
実際に、物流業界が抱える主な課題についてご紹介します。
・小口発送増加、積載率の減少
・人手不足
・激務化・労働環境の悪化
課題①小口発送増加、積載率の減少
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、BtoC-EC全体の半数以上を占める物販分野の中でも、スマートフォン経由での市場規模は約6,500億円となり、BtoC-ECの物販分野全体(約9.3兆円)の約40%となります。
この背景からもわかるように、ネットショッピングがより浸透したことから、配送では小口発送が増加し、積載量が減少していることは明らかです。
実際に、国土交通省が2019年に発表した「物流を取り巻く現状」によれば、2015年の貨物1件あたりの貨物量は0.98tで、10年前の2005年の1.27tと比較して、およそ23%減少していることがわかります。
課題②人手不足
あらゆる業界に影響を及ぼす少子高齢化による、労働力・人手不足は、物流業界においても深刻化しています。
国土交通省の調査で、「トラックドライバーが不足している」と答えた企業の割合は、年々着実に増加し、2018年では、70%までにのぼっています。
さらに、人手不足の深刻化はトラックドライバーだけにはとどまらず、厚生労働省が実施した2019年の「労働力経済動向調査」では、運輸業・郵便業全体の60%以上の企業または事業所が「労働力が過剰に不足している」と回答し、業界全体で深刻な人手不足に悩まされていることがわかります。
課題③激務化・労働環境の悪化
上記の積載率の低下と人手不足の2つの課題から導けるように、物流業界全体における業務の激務化、労働環境の悪化も課題として挙げられます。配送料の値上がりが実施されたといえど、集客のために「送料無料」などを売りにする企業も多かったり、小口配送のうえ、受取人不在がゆえに、再配達が必要になったり、物流業務とくに配送にまつわる業務では、低コストの中で、重労働が課せられているというのが現状です。
今後取り組まれるべきポイント
以上で挙げた3つの主要な課題に対して、今後取り組まれるべきポイントとしては以下が挙げられます。
・労働環境の改善
・作業の標準化
深刻な人手不足を補うためには、これまでの作業においての省人化や省力化が必要不可欠です。物流業界が抱える課題に対して、「国(国土交通省)」「物流業界」「EC事業者」の3者が実際に行なっている施策、これから取り掛かるべき取り組みなどについて、それぞれご紹介します。
国土交通省による物流課題への取り組み方
国土交通省では、トラック運転者の労働環境改善を実現すべく、様々な施策を実施しています。具体的な取り組みは、以下の通りです。
・2019年4月 トラック運転者に対して、有給休暇の時季指定
・2023年4月 中小企業の月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ
・2024年4月 トラック運転者への時間外労働の上限規制の適用
さらに、国土交通省の物流課題に対する代表的な取り組みとして、2016年10月に施行された「物流総合効率化法」も挙げられます。物流業務の効率化と輸送網の集約を目指し、「2以上の者が連携した、流通業務の総合化」を図るべく、具体的に大きく分けて3つの施策が掲げられています。
①輸送網の集約
従来の輸送に関して、倉庫や流通加工場、荷捌き用施設などがそれぞれ各地に分散され、各施設への輸送が必要となり、業務効率の非効率さが問題視されていました。
これを改善すべく、複数が連携し、製品保管や流通加工、荷捌きなど流通業務における全ての機能を有した「輸送連携型倉庫(特定流通業務施設)」の設立が推進されています。
②輸配送の共同化
積載率の低下に対して、従来の個別納品ではなく、高い積載率を目指した一括納品を実現すべく、大型共同倉庫の設立などが推進されています。輸配送の共同化を実現することで、業務効率の改善や人手不足解消、CO2削減など、複数の課題解決を見込んでいます。
③モーダルシフト
従来のトラックのみの輸送から、鉄道や船舶など、複数の手段を用いて一度での大量輸送を推進することで、積載率の増加や人手不足解消、燃料費削減を目指します。
これらの事業を実際に実施する際に、経費補助や特例となる税制度、立地規制に関する配慮などに関して、国からの補助を受けることができます。
しかしながら、「物流総合効率化法」では主に物流業界、運送業者に対する施策となっているため、実際に物流企業とEC運営企業との関係性構築や改善に関する施策には最適とはいえないでしょう。そのため、国だけでなく、それぞれの企業でも改善に取り組むことが必要とされています。
参照:)https://www.mlit.go.jp/common/001320985.pdf
物流業界による物流課題への取り組み方
物流業界の課題に対する代表的な取り組みとして、「物流システムの構築」「再配達の防止」「AI、ドローンの導入」が挙げられます。
①物流システムの構築
手作業による作業が多かった物流業界では、WMS(倉庫管理システム)やTMS(配送管理システム)などの物流管理システムをはじめとした、業務のデジタル化が進められています。物流業務や在庫、それにまつわる情報等の一元管理が可能になったことで、業務効率の改善や人手不足解消を図ることができます。
②再配達の防止
トラックドライバーの負担軽減を目指した代表的な取り組みとして、「再配達防止」が挙げられます。具体的な取り組みとして、「宅配ボックスの設置」があります。日時指定が困難な場合であっても、宅配ボックスを用いることで再配達せず、確実な荷物の受け取りを実現することができます。
しかしながら、これらは荷物の受け取り側が、コストをかけて設置しなければならず、現状として、個人宅などでは十分に浸透しているとは言い難いでしょう。
③AI、ドローンの導入
物流業界では、他業界と比較しても、作業の自動化・機械化に遅れをとっているという現状があります。そのため、業界全体で、AIを活用したシステムの改善や自動運転の導入、ドローンによる配達の実用化などを目指しています。
ただし、自動運転やドローンの活用に関しては、法律が整っていないこともあり、すぐに浸透させることは現実的ではありません。したがって、引き続き長期的に取り組む必要があると言えるでしょう。
EC運営企業が検討すべき施策
国や業界による物流課題への取り組みを踏まえ、EC運営企業が取り組むことのできる施策としては以下が考えられます。
①シェアリングサービスの導入
近年のECの需要の伸びに伴い、物流業界ではそれに対応すべく、様々なサービスが誕生しています。その一つにシェアリングサービスが挙げられます。異なる複数のEC事業者で、同一の物流施設を利用することで、一度に配送できる数量を増やし、積載率の増加やドライバーの負担軽減を図ることができます。
②マッチングサービスの利用
シェアリングサービスと同様、比較的新しいサービスとして注目されているのが、マッチングサービスです。荷主と倉庫や車両、ドライバーなどをマッチングさせ、必要な分だけの稼働を可能にします。積載率の向上やドライバーへの負担軽減など、物流業界全体の課題解決だけでなく、「必要なときに必要な分だけ」を実現できるため、自社のコスト削減も見込むことができるでしょう。
③物流管理システムの導入
配送コストの引き上げにより、EC事業としては、配送コストではなく、それ以外のコスト削減を目指すことで、商品全体のコストを抑えることが必要となります。その際、在庫やデータの一元管理が可能になる、物流管理システムを導入することで、物流業務における人手不足を改善し、人件費を抑えることで、全体コスト削減の実現を見込むことができます。
④物流アウトソーシングの導入
物流管理システムの導入の他にも、物流アウトソーシングを行うことで、全体コスト削減を見込むことができます。自社に物流に関するノウハウがない場合や、ECの売上拡大に伴い業務量が増加しているにも関わらず、社内のシステムが整っていない場合は、アウトソーシングをすることで、全体のコストを抑えつつ、業務効率の向上を見込むことができるでしょう。
物流業界における今後の動向
EC事業の好調が見込まれ続けることから、今後も物流業界の需要は拡大していくことが見込まれています。上記で述べたように、課題が深刻化する一方で、国や業界は、最新テクノロジーを用いた取り組みを進めています。
課題に対して、業界全体で取り組むだけでなく、EC事業者による施策の実行も大きな影響を及ぼすことができるでしょう。そのため、シェアリングサービスやマッチングサービス、物流管理システムやアウトソーシングの利用など、自社のEC拡大とともに、物流業界が抱える課題へ強い意識を向けることも必要になってくるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今後も伸びが見込まれるEC市場だからこそ、課題に取り組むことで、業界全体の深刻な問題にもアプローチすることができるのではないでしょうか。自社で実践しうる施策を見極め、自社そして業界全体の課題解決に繋げましょう。ぜひ参考にしてみてください!
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